☆ 絵を描くとき、心には見えているイメージがあります。
ぼんやり、漠然とした世界ですが、心の中を静かに眺めていると
霧が晴れるように見えてきます。
☆ 心の風景を絵にするために、形や色としてスケッチブックに描いてみます。
何点かデッサンをとって、印象を確かなものにしていきます。
描き進めるための地図がそろい、表現したいものが見えてきたところで、
水彩紙を用意します。
いよいよ白い紙に筆を入れるとき、本当に絵が完成するのだろうかという不安と期待とで、
嬉しい緊張感に包まれます。
初めは全体にごく淡く、徐々に濃い色を塗り重ねていきます。
(制作画像は左から→右へ進行しています。)
とても淡い色の塗り重ねなのですが、作品中央に少しずつ天使が見えてきます。
ぼんやりと柔らかで温かな印象が気に入り、嬉しくなります。
彩色は1カ所だけに集中して描かず、全体的に色をのせていきます。
天使の瞳にも最初から淡く色を入れています。
☆ 色がのってきました、背景も少しずつ見えてきます。
森、木々、差し込む光。
心にあるイメージを描き続けます。
水に溶いた水彩絵具を水彩紙にのせると、
まるで自然現象のように、鮮やかな発色や広がりをみせたり、滲んだり、流れたり。
そんな色の偶然をある程度操りながら描きます。
不思議な感覚が嬉しく感じられます。
☆ 光が差し込んできました。
色を塗り重ね、なじませ、また色を薄くしたり、
イメージを具体化する為に、一体どの様に表現したら良いのか、
別の水彩紙を使い色合いや技法を試したり、悩ましくも楽しい所です。
描く度に、新しい発見があります。
これは世界ではじめて!(私の知る限り)という描き方が見つかることがあったり。
そんな時は私的な大発見に心躍ります。
☆ 心のイメージが絵の中に少しずつ浮かび上がってきました。
細かな所を心穏やかに描きます。
天使とその翼も見えてきます。
途中、時間を置いて絵を見つめます。
感じられる光や空気感を描いていきます。
☆真っ白だった水彩紙に世界が見えてきました。幸せなところです。
少しずつの描画ですが、一筆一筆と描く内に世界が見えてきます。
制作中は絵の世界に入り、とても集中して描いています。
近年描いている天使絵画に共通するのですが、
制作の終盤あたりから、水彩絵具の他、染料、アクリル絵具、ワニスも使用しはじめます。
ここでは彩度の低い絵具を水に薄く溶いて、
それを作品全体に塗って色彩を馴染ませるグレージングを行います。
全体に色彩が馴染んで落ち着いてきたところで、
再び、光の加減、色合いなど丁寧に描きおこします。
そしてまた違う色でのグレージングを…と、繰り返すことで、
色の深みと、広がりがでてきます。
作品制作の最終段階に入っていますが、逆にスタート地点とも思えます。
心のイメージと合わせながら描画を繰り返すうちに、
絵も少しずつ生きてくるようです。
☆大きな作品だったこともあり、長期の制作になりましたが完成しました。
制作中には、このひとつの作品に表現したいことの全てを込めようとしてしまい、
どこを完成とするのか、どこを目指しているのか、
わからなくなってしまうことがありましたが、
当初この作品で表現したいのは何だったか、と原点に戻り描き上げました。